鹿児島フリーライターのブログ

横田ちえのブログです。

雲月農園のはなし。

鹿児島県姶良郡湧水町にある「雲月農園」のパンフレット制作で、執筆と一部撮影を担当いたしました。関係者の許可を得てその記事をこちらのブログにアップします。

f:id:kirishimaonsen:20200515121709j:plain


雲月農園のはなし。

「田んぼも畑も毎日やることだらけです。でも、身体を動かして食べ物を作る生活は何ものにも代えがたい充実感があります。作ったものをおいしいと喜んでくれる人がいるのも嬉しいですね」

ここは栗野岳の麓にある雲月農園。私が訪れたのは秋の終わりで、稲刈りと掛け干しの大仕事を終えた竹野さんご夫婦が迎えてくれました。


f:id:kirishimaonsen:20200515122355j:plain

衣料品チェーン店で働いていた功さん。仕事のやりがいを感じながらも「新しい服をどんどん作り、消費し続けてもらわないとないと成り立たない仕組み」に対する違和感を抱くようになったそう。一方愛さんは加工食品メーカー勤務、子育てを経験し食への関心が高まっていました。

「今の社会は私たちが便利に暮らすために限りある資源や自然を消費し続けています。それは、一度使ってしまったらすぐ元には戻りません。成長・拡大・消費し続ける生活ではなく、土地に根ざして身の丈に合った暮らしがしたいと考えるようになりました」と功さん。


f:id:kirishimaonsen:20200515122243j:plain

食べ物を自分たちで作り、自然の中で子育てできる環境、それらを考えてたどり着いた答えが田舎暮らしと農業でした。縁あって湧水町に土地が見つかり移住。無農薬・有機栽培で米と野菜を作り始めました。これが雲月農園のはじまりです。

湧水町に住んでまず感動したのは、水も野草も豊かな土地だということ。
「私はコンクリートだらけの大阪都心で育ちました。母が空き地に生えた土筆を採って料理してくれたことをよく覚えています。それはとても貴重な恵みでした。それが、湧水町ではいろんな野草がたくさん生えています。水もおいしい。まるで宝の山だと思いました」と目を輝かせる愛さん。


f:id:kirishimaonsen:20200515122317j:plain

とはいえ、はじめての農業は戸惑うことも多かったのだとか。
「本に書かれていない作業が膨大にありました。知識だけで実践しようとしてたくさん失敗しましたね。それでも、やっと実った稲穂が金色に輝く様子を見ると、とても満たされた感じがします」と嬉しそうに話す功さん。


f:id:kirishimaonsen:20200515122400j:plain

雲月農園を始めてからは、毎日が発見の連続です。
「つくづく自然には生かされていると感じます。うまく共存していけるような暮らし方を積み重ねていきたいです。小さな農園なので作物や農産加工品もたくさんは作れませんが、共感してくれた人に気に入ってもらえたら嬉しいです」


f:id:kirishimaonsen:20200515124709j:plain

雲月農園という名前は、禅の「耕雲種月(こううんしゅげつ)」という言葉から。高い目標を掲げて日々こつこつ努力をするという意味にちなんでいます。この名前には竹野さんご夫婦らしい生き方が現れていると感じました。水も空気も澄んで心地よい湧水町、竹野さんご夫婦のまっすぐな考え方に清涼感を与えてもらった一日でした。


f:id:kirishimaonsen:20200515122242j:plain

取材・執筆 横田ちえ



後記:田園風景の向こうにそびえる栗野岳雄大湧水町。畑や湧き水へ案内していただき楽しい取材でした。竹野さんが作る漬物がとてもおいしかったです。竹野さんの農産物や加工品は「霧島ふもとの道の駅」でも販売されているので、霧島観光の際はぜひ立ち寄ってみてください。

竹野さんのブログはこちら↓
kumotuki.chesuto.jp

【調査】屋久島は降雨量日本一だから、ダムもスゴいの? 見に行ってきた

本記事は、2018年1月18日に「ネタりか」(運営元:ヤフー株式会社)で公開された記事を転載したものです。「ネタりか」が閉鎖されたため、許可を得てこちらにアップしました。


f:id:kirishimaonsen:20200505193528j:plain


こんにちは! 鹿児島ライターのちえです。


突然ですが皆さん、日本で最も雨の多く降るエリアはどこだかご存じですか?


f:id:kirishimaonsen:20200505193043j:plain


答えは屋久島」です!


f:id:kirishimaonsen:20200505193045j:plain


映画『もののけ姫』の舞台のモデルとなった苔むす森や、樹齢数千年の縄文杉などが有名な屋久島ですが、「月に35日雨が降る」と言われるくらい、とにかく雨がよく降ります。


そこで疑問に思ったのが、


「降雨量トップクラスの地域のダムはどうなっているの?」


ということです。


観光資源としても注目されているダムですが、屋久島のダムの話はほとんど聞いたことがありません。


というわけで今回は、屋久島のダムを見に行ってきました!



まずは尾立(おだて)ダムへ行こう!


早速ダムを見に行きます!


屋久島のダムは、「尾立ダム(別名:荒川ダム)」1つだけです。


f:id:kirishimaonsen:20200505193050j:plain


荒川登山口にやってきました。


尾立ダムのある場所は、有名な縄文杉へと続く荒川登山口の近くです。荒川登山口へはバスが運行していますが、12~3月のオフシーズンは一般車両での乗り入れもできます。


f:id:kirishimaonsen:20200505193052j:plain


荒川登山口から1キロメートル弱ほど引き返して、トンネルを抜けると……。


f:id:kirishimaonsen:20200505193101j:plain


尾立ダムです!


しかし、「立入禁止」の札が掛けられており、中には入ることができないようです……。


f:id:kirishimaonsen:20200505193247j:plain


ダム沿いに金網が張りめぐらされており、隙間から撮影するくらいしかできません。


f:id:kirishimaonsen:20200505193251j:plain


定礎板や、


f:id:kirishimaonsen:20200505193253j:plain


ダムの本体が金網越しに見えました。


しかし中に入れないので、いまいち全貌が見えません。


f:id:kirishimaonsen:20200505193256j:plain


尾立ダム、一体どんなダムなのでしょうか!?


このダムを管理している屋久島電工さんに話を聞きに行ってみましょう!


「尾立ダム」について聞いてみよう!


f:id:kirishimaonsen:20200505193308j:plain
▲宮之浦にある屋久島電工


――尾立ダムを見に来る観光客はいますか?

屋久島電工:ほとんど聞かないですね。縄文杉を見に行く人も、バスに乗っていて気づかず通り過ぎるのではないでしょうか。金網越しにしか見えませんし。



f:id:kirishimaonsen:20200505193319j:plain
▲木の枝に隠れていてほとんど見えない尾立ダム


――降雨量日本一とも言われる屋久島ですが、ダムの貯水量も多いですか?

屋久島電工:いいえ、ダムの規模は大きくありません。貯水量は約200万立方メートル【※】です。

※ 貯水量全国1位の徳山ダムの貯水量は6億6000万立方メートル


――「雨が多い=ダムの水が多い」というわけではないんですね。

屋久島電工:はい、そうです。ダムの機能は洪水の調整、水資源の確保、水力発電、河川環境の保全など、その土地によってさまざまですが、屋久島の尾立ダムは水力発電のみを目的に作られています。


f:id:kirishimaonsen:20200505193321j:plain
屋久島には川が数多く流れている。これは安房川(あんぼうがわ)


――どうして屋久島に水力発電のダムを作ることになったのですか?

屋久島電工水力発電は、落差のあるダムを利用して水を下に流し、発電用の水車を回す仕組みです。標高差のある地形、雨の多い土地という条件が必須になります。屋久島は周囲132キロメートルの小さな島ですが、九州最高峰である標高1936メートルの宮之浦岳をはじめとする険しい山々が連なっています。雨も多く水力発電にぴったりでした。


f:id:kirishimaonsen:20200505193328j:plain
屋久島の模型。標高の高い山が島の中心部に連なっている


――尾立ダムはいつからありますか?

屋久島電工:1963年4月に完成しました。それ以前は、大きな集落では川の水を利用した小水力発電があったようです。


f:id:kirishimaonsen:20200505193345j:plain
▲尾立ダムはアーチ式コンクリートダム。この建造には、水圧に耐えるダム両脇の強固な基礎岩盤の存在が必要。花崗岩(かこうがん)が隆起してできた屋久島はこの条件を満たしていた


――島内の電力供給のどれくらいを水力発電でまかなっていますか?

屋久島電工:ほぼ100%です。


――えっ!? すべて水力発電なんですか?

屋久島電工:はい。発電量は5万8500キロワットで、このうち約25%が家庭用に使われています。バックアップとしての火力発電を用意していますが、水が足りなくて火力発電を使うことはほとんどありません。水力発電所のメンテナンスをするときに稼働させています。



降雨量が多い、傾斜が急で険しい地形、花崗岩の強固な地盤、屋久島の自然条件がまさに水力発電にうってつけだったのですね。


太忠岳(たちゅうだけ)に登って、尾立ダムの全貌を見る!

道路沿いからは全貌が見えない尾立ダムでしたが、


f:id:kirishimaonsen:20200505193355j:plain


太忠岳に登れば、山頂から尾立ダムが見えるという地元情報を入手!


最後に登ってみたいと思います。


f:id:kirishimaonsen:20200505193412j:plain


太忠岳に登るにはヤクスギランドの登山口からスタートします。


「ランド」と聞くとレジャー施設のような印象を受けますが、ヤクスギランドは屋久杉が群生している神秘的な森です。


f:id:kirishimaonsen:20200505193413j:plain


登山口からは太忠岳の山頂が見えます。このとんがった岩は、太忠岳山頂にある天柱石(てんちゅうせき)。ここまで登ります!


所要時間の目安は登り3時間30分、帰り3時間、往復で6時間30分の登山コースになります。


……遠い。


f:id:kirishimaonsen:20200505193422j:plain


安房川を渡り、


f:id:kirishimaonsen:20200505193429j:plain


苔むす森を進みます。


f:id:kirishimaonsen:20200505193434j:plain


水を蓄えた苔がキラキラ輝く森の風景や、


f:id:kirishimaonsen:20200505193437j:plain


巨大な屋久杉を眺めて、ひたすら歩きます。


f:id:kirishimaonsen:20200505193443j:plain


標高1200メートルを超え、山頂まであと1時間を切った頃、雪が降ってきました……。


f:id:kirishimaonsen:20200505193453j:plain


あっという間に雪景色に。


山頂が霧で覆われてしまうと、尾立ダムが見えなくなってしまいます。不安になりながらも山頂に進みます。


f:id:kirishimaonsen:20200505193500j:plain


山の天気は、晴れたり曇ったり雨が降ったりとコロコロ変わります。ましてや降雨量の多い屋久島。霧で覆われてしまうことも多いです。


少し日が差してきました! どうかこのままの天気で……!!


f:id:kirishimaonsen:20200505193505j:plain


天柱石に到着! ロープを伝って岩をよじ登ります。


f:id:kirishimaonsen:20200505193510j:plain


この岩の先に……。


f:id:kirishimaonsen:20200505193514j:plain


見えました!


山に挟まれた真ん中に見えるのが尾立ダムです。素晴らしい眺望!


f:id:kirishimaonsen:20200505193518j:plain


これが尾立ダムの全貌です。ダム好きの方には小さくて物足りないかもしれませんが、雪に降られながら苦労して登ったので、とても感動しました。


このダムの水で、屋久島島内で使うすべての電気を作っているのですね……。


f:id:kirishimaonsen:20200505193525j:plain


晴れた空に虹がかかっていました。


おわりに

降雨量日本一の屋久島のダムについて調べてみたら、独自の地形を利用した発電事情について知ることができました! 世界遺産の島・屋久島の別の側面が見えたようで、楽しい取材でした。


屋久島以外にも、鹿児島の離島は、ロケット発射基地のある種子島や、世界初の海流発電の実証実験が沖合で行われた口之島など、大自然と科学の同居する不思議な土地です。


手つかずの大自然が残されているからこそ、さまざまな可能性が眠っています。


離島を訪れることがあったら、観光だけでない側面に目を向けてみるのも面白いですね。


ライター:ちえ(@kirishimaonsen

編集:ノオト

「南薩の田舎暮らし」の金柑とたんかんのコンフィチュールを取り寄せてみました。

f:id:kirishimaonsen:20200420235024j:plain

在宅ワークのお供に甘いものが食べたくなって「南薩の田舎暮らし」で金柑とたんかんのコンフィチュールを注文しました。


新型コロナウイルスの影響で、私は現在ほとんどの取材を停止中。ひたすら画像整理や資料整理など自宅でできることをしています。家で過ごす時間を楽しむために珈琲を淹れたり、手の込んだ料理をしてみたりしていましたが、自分のつくるものに飽きてきました……。


なにか、おいしいものが食べたいな~と思っていたところへこのツイートを見かけて注文。



「南薩の田舎暮らし」を運営する窪さんはご夫婦で農業をされていて、自家農園の作物を使った加工品づくりもされています。そんな「南薩の田舎暮らし」の人気商品であるコンフィチュール。鹿児島県南さつま市大浦町産のブランド金柑「春姫」と、「南薩の田舎暮らし」自家農園のたんかんを使ってつくられています。


f:id:kirishimaonsen:20200420235139j:plain
画像引用元:南薩の田舎暮らし


柑橘類のコンフィチュールやジャムはたくさん世の中にありますが、この金柑とたんかんのコンフィチュールの魅力は絶妙な味のバランス。甘味や酸味が濃厚な金柑に、フレッシュで爽やかなたんかん、この2つを組み合わせることによって、甘み・酸味・柑橘のフレッシュさが感じられ奥行きのある味わいになっています。マーマレードのようなものをイメージしていましたが、苦みはほとんどなく甘酸っぱくフレッシュな味わいです。苦いのが苦手な方にもおすすめです!


f:id:kirishimaonsen:20200420235304j:plain

そして見た目も美しいのです。蓋を開けてみると、鮮やかなオレンジ色に気持ちまで明るくなります。


つくり方はこちらのブログ記事で公開されています。丁寧に下処理をして、素材の味わいにふさわしい時間で銅鍋で煮込み、金柑の皮が固くならないように何度かに分けてグラニュー糖を入れて、瓶に詰めた後しっかり脱気・殺菌する……。しっかりした職人技でつくられています。


発見だったのは「ジャムは短時間で強火で仕上げるのがおいしい」ということでした。長時間煮込むとジャムの食感を左右する高分子が壊れてしまうそう。フレッシュな柑橘の風味が感じられる味も短時間で仕上げているためでしょうか。


f:id:kirishimaonsen:20200420235311j:plain


スプーンですくってみるととろりとした質感。市販のペクチンを添加せず、薄皮から丁寧にペクチンを抽出する作業を経てつくられています。


f:id:kirishimaonsen:20200420235315j:plain


パンに塗って食べました。おいしい……! 冒頭にも書きましたが、金柑とたんかんを合わせることによって、甘味・酸味・柑橘の爽やかさといった味わいの奥行きが深い。コンフィチュールにしても素材のフレッシュさが活きているようで、さっぱり食べられます。


f:id:kirishimaonsen:20200420235435j:plain


私は3つ注文したのですが、1つは届いてすぐに全部食べてしまいました……。実は、味見をしようとスプーンでひとすくい食べてみたら止まらなくなってしまったんです……。


f:id:kirishimaonsen:20200420235321j:plain


パンやビスケットに塗ったりヨーグルトに入れたり、いろんな食べ方ができます。でもまずは一口、そのまま味わってみて欲しいです。南薩の柑橘の恵みがぎゅっと詰まっています。私みたいに全部食べてしまわないよう気を付けて……。


購入は、こちらの「南薩の田舎暮らし」の公式サイトからできます。

http://nansatsu.shop-pro.jp/nansatsu.shop-pro.jp


その他、「minne」でも取り扱いが。

https://minne.com/items/22269654minne.com